しみじみ映画というもの
「河童のクゥと夏休み」鑑賞

夏休み直前、康一は河原にあった石ころを掘り出す。拍子に割ってみるとなにやら動物の化石が。家に帰って洗ってみるとそれは冬眠してた河童の子だったのだ.....

 
マイフェイバリットムービー「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」の原恵一が満を持して作った作品はとっても情緒ある作品に仕上がっていた。

まず舌を巻くのは平成の核家族と小学生生活のど真ん中を描き上げたそのリアルさであろう。台詞回しから表情、他の人との距離の取り方はステレオタイプではない「あるある」感がにじみ出ている。特に妹のひとみの動きはまるで自分の娘を見てるようで、ついつい目で追ってしまうほど。その他エキストラとして画面に描かれる名もない人たちも(多少わざとらしさがあるものの)とてもリアルだった。それが”クゥ”という河童(=異生物)の存在を際だたせているのだが、その河童に一番マトモなことを言わせてる点が現代社会の歪みを浮き上がらせている。

と、まぁこのあたりは腐るほどある教育アニメビデオの大方のテーマであったりするが、原恵一は”死”という毒をふりかけることで教育臭さを払拭している。そしてその毒が作品にとても大きな深みを与えているのだ。

2時間半に迫る長尺、テレビアニメではあり得ないグロテスクなシーン、全体的に地味な演出等々は子どもには不向きで大人向けのアニメと捉えられる節もあるかもしれん。
しかし、画一教育を受け、動物の死骸や血の色をリアルに体感できなくなった現代っ子こそ観る映画だと思う。これを観て心に残った”何か”がとても大事なものだということを後で気付くだろう。

感動映画=お涙頂戴映画でないのだが、「ET」や「のび太の恐竜」とは違ったエンディングをクゥに用意してくれた原恵一の優しさにしみじみと涙した。

よかったです。

82点

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