原作というもの2

2006年1月26日 連載
エッセイとか短歌とか、一人称で文章を書くのに慣れると小説系な文章を書けなくなるのだ、と気付く。

せっかく書いた夢の話、プロローグの部分で伏線の張り方が気に入らないのととても堅苦しくなったので全部ボツ。
もうちょっとかわいく書かんとな。

物書きさんは大変なんだなぁということと、俺には文才がないことに40手前で気づき、多少ヘコむものの、新しく書いたのはそれなりにかわいくなってるのでもうちょっと書いてみようと思う。

ボツ部分、悔しいのでここに捨てます(笑)

*******
12月、北陸の午後、曇り。
冬はまだはじまったばかりだというのに日本海側は大雪にみまわれていた。
腰高にまで雪の積もった雪は景色を白く曇らせ、音を消す。そんな中で子供のはしゃぎ声と犬の鳴き声は際だって大きく聞こえた。
農道横の空き地、除雪車の吐き出した雪が山のように積まれ、さながら小さなスキー場といった具合だ。そこに男の子と一匹の子犬が遊んでいる。
身体に似合わない大きめのオレンジ色のダウンにニット帽という出で立ちの男の子が雪の上を転がり、その周りをクルクルと陰のように黒く小さな影が跳ねる。一挙一動に笑い、叫び、跳ぶ。
その様子を離れた所に立つ父親がぼんやりと眺めていた。

「パパ、こんなに雪積もったがはじめてやないけ?」
5歳になったばかりの男の子は犬に舐められながら大きい声で叫ぶ。そういえば最近まとまった雪を見てない。この子が生まれてからは特にそうだ。毎年2月にちょっと積もったくらいでスタッドレスタイヤも必要ないくらいだった。

何年ぶりだろう?この空き地にこれだけの雪山が出来たのは…
少なくとも20年は経つ。僕もちっちゃいときミニスキーで遊んだ記憶がある。夜遅く帰って母親に叱られたもんだ。

父親は、はじめて見る大雪に子供がはしゃぐのも判る気がした。

びゅう!

冷たい風が頬をかすめ身震いする。コートを着てても寒い。ポケットの中の携帯を見ると4時を少しまわったところだった。
「タッくん、帰るよ」
オレンジのダウンに大きく声をかける。男の子はいかにも不満そうな表情を見せるも、子犬にワンとせかされ渋々最後のひと滑りをする。

「まだ遊びたかったがにぃ…」
「明日は幼稚園やろ、風邪ひいたらどうすんが」
お尻についた雪を落とし、父親は諭す。かれこれ30分は雪と格闘してただろうか、“子供は風の子”とは良く言ったものだ。
その様子を子犬は人なつこそうに見上げている。

「ねぇパパ」
「なんけ?」
「この犬、ホンマにおばちゃんに返すが?飼ったらダメなんけぇ?」

真っ黒で足先と鼻の頭が白いのと、笑ってしまうくらい足が短いところは母犬と“うり二つ”だった。
父親は犬を撫でながら答える。

「うーーーん…ママに聞いてみてから、やな」
「うそ! ママなら絶対賛成してくれるはずやわ!」

男の子は飛びはね、それを見た子犬もはしゃぎながらジャンプした。
性格は父犬似なんだな…
そんなことがふと頭をよぎりクスと笑った。
でも、まだ彼自身、決めかねていた。この犬をもらうかどうか?

「さあ、タッくん いくよ」
「うん!!名前なんにしたらいいかねぇ?」
「まだ飼うかどうかわからんやろ」

リードを取り付けるながら父親は答える。
ダッシュする子犬に引っ張られながら、親子は薄暗くなりはじめた雪道を歩き始めた。
時折確認するようにこちらを見る子犬は、そのままあの2匹を連想させる。
昔、飼っていた子犬たち…

「とりあえずコレを見てください。」
今朝急に現れた白杖を持つ女性は、この子犬と一緒に一枚の写真をもってきた。
そこには、若かりし頃の晴れ着をきた女性と2匹の成犬が写り、裏に

“カスミとノン・ゲン 平成3年正月 父撮影”

の文字があった。
3日後にまた来ると言い残し、女性は犬と写真を置いて帰ったのだ。
明日がその3日目だった。

「ノン… ゲン…」

ポケットにしまったその写真を握りしめ、父親は大きく息を吸った。
色を無くした空は、もう暗くなり始めていた。
夢を見た。

夢のくせにしっかりしたストーリーで物語然としててびっくり。
なんか絵本になりそうな話だった。

登場人物は5歳の男の子そうちゃんと2匹の犬ゲンとノン、そして盲目の女子高生カスミ。
のんびりとした性格のそうちゃんは彼の不注意で飼い犬のゲン・ノンと離ればなれになってしまう。2匹は病院から帰る途中のカスミに拾われるんだけど、そこから20年後までを描いた叙情詩。ゲンとノンはおじゃる丸のオコリン坊とニコリン坊のような感じでそれぞれキャラクターがある。
エピローグは自分の夢なのに感動してしまい鳥肌が立った。バカである(笑)。

でもねぇ、すごい心に染み入る話なのよ。
「あらしの夜に」+「東京タワー」的な話かなぁ。

俺に絵心があればすぐにでも絵本化して自費出版するんだが、そんな才能はないので、とりあえず忘れないうちに文章に起こそう。つじつまを合わせるために多少脚色は必要なんだが、1万字弱くらいのボリュームになりそうだ(^_^;)

飽きるまで書いてみようっと。

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