タレント映画というもの
「刑事物語」を観る。

「男はつらいよ」の安定的ヒットを横目でみてた東宝は実際砂を噛む思いをしてたに違いない。予算をかけず固定ファンのみにアナウンスするベタな人情話が正月ごとにコンスタントに売れる。こんな美味しい商売はない。
そんな中、片山蒼という男が箸にも棒にもかからないような古くさい原案を売り込んできた。いつもなら丁重にお断りするところだが、片山蒼のネームバリューと人情ロードムービーという寅さんの2匹目のどじょうを狙えるってんで製作にゴーサインが出る。
狂喜乱舞した片山蒼は自ら脚本も手がけた。
天下の東宝を動かしたその片山蒼とはいかなる人物か?

.....なにを隠そう武田鉄矢その人である。(笑)

製作サイドは「寅さん」をつくって欲しかったが、アクション映画となった。当時流行ったカンフー映画の影響をモロに受けた武田鉄矢は、肉体改造までしてこの映画の為に臨んだのだ。今更アクション控えろともいえない。
ハンガーを使った格闘は素人にしては上出来、物語も意外としっかりした作りで一部を除いて破綻がない。当時、テレビでは観ることができない吉田拓郎が楽曲を提供したという話題性も手伝って、そこそこのヒットを飛ばすことになった。

当の武田鉄矢はある意味ここで満足したはずだ。或いはもうネタ的に切れてたはずである。しかし、東宝がそれを許さず以後「刑事物語5 やまびこの詩 」まで駄作を作り出すことになる。(^_^;)

このシリーズ、実は意外と大物が出演している。
鈴木保奈美や沢口靖子、あいはら友子のデビュー作もこのシリーズだし、ヤクザ映画ではおなじみの石橋蓮司、石倉三郎、小林桂樹、田中邦衛。大御所では大友柳太朗、西田敏行、高倉健なんぞも出演したし、植木等、三波春夫、ガッツ石松、ハナ肇といったカメオから賀来千香子、星由里子、酒井和歌子、倍賞千恵子といった往年のきれいどころまで。あ、樹木希林も出てたな。
まぁ出演なさった方々は記録から消したいと思ってるかもしれんが。(笑)

これで映画の面白さを知った武田鉄矢は再びシリーズもの「プロゴルファー織部金次郎」を手がけ、これも5作作られるが、全然パッとせず尻すぼみで終わっている。

寅さんが残って、刑事物語が残らなかった理由はなにか?
先にも書いたように話的にはまずまずの出来だったのだが、寅さんの固定客と違い本作のターゲットである当時の若い層がバブルに踊り、人情物語を認めなくなったということが要因だと思われる。見慣れないハンガーアクションで1STはそこそこ売れても、アクションは焼き増し、物語をひねったところで見向きはされなかったということだろう。

もひとつ、この物語の唯一にして最大の問題点「所轄の刑事が全国を飛び回って事件を解決する」というあり得ないプロットをシリーズものの核に持ってきてはダメだってことだな(笑)。一作でやめておけばよかった。

でも結構好き。

55点

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