ダイエット映画というもの
2006年5月22日 映画
「アメリカン・サイコ」からこっち、エロい肉体美を惜しげもなく晒して演じてたクリスチャン・ベールがロバート・デ・ニーロ並みに肉体改造して挑んだ不条理映画「マシニスト」鑑賞。
一年以上眠れない男、トレバー(クリスチャン・ベール)。彼は昼間は工場で働く労働者であったが、ある日、彼の前にアイバンと名乗る男が現れる。それを境に彼のまわりで不可解な出来事が続くようになる......
冒頭で不条理映画と書いたが、「マルホランド・ドライブ」や「ドニー・ダーコ」といったタイプの映画を観た者が「え?」と頭に疑問符がつくタイプの不条理ではなく、主演のクリスチャン・ベールのみが底なし沼に落ちるようなタイプの映画で、そういう意味では真っ当な理路整然とした映画と言える。
あいや、理路整然とはしてない。
....何を言ってるのかわかりませんか?
ジミー大西のサイケな絵画や岡本太郎の熱のある造詣などに代表される芸術は彼らが普通とは違った感覚を持っているからこそ出来る技である。その感覚のおかげで日常生活においてはしばしば奇行をとったり、その才能に蝕まれ壮絶な最期を遂げる場合も多い。判りやすく言えばキチガイなのだな。
映画も同様で、例えば黒澤監督はとんでもないかんしゃく持ちの完璧主義者でそれ故彼から離れていった映画人は数多いし、トビー・フーパーも俺の大嫌いな(笑)ペドロ・アルモドバルも、すげぇ映画を撮る監督はおおよそキチガイであると思われる。
不条理映画になると更に顕著で、凡庸な人間が背伸びして作ると「真夜中の弥次さん喜多さん」のような普通のギャグ映画か「プラン9・フロム・アウター・スペース」のような薄っぺらいただの駄作になってしまう。
で、先に戻るとこの「マシニスト」は凡人が作った失敗作に分類されるところの不条理映画ってことなのだな。
いや、「死者の盆踊り」ほどつまらなくはないし、暗転の仕方や青を基調としたモノクロっぽい画面作りは過去の映画をオマージュしてて好感持てるし、主演のクリスチャン・ベールの30キロダイエットはよく頑張ったと思う。
でも不条理に判りやすい答えを用意した段階で既に不条理ではないワケで、万人が「あーやっぱそういうことね」って感想以外持ち得ないってのは作り方としてどうかと思うのだ。聞けば映画制作中、監督は精神を病んだらしい。で、こんなやる気のないオチになったかもしれない。
デヴィッド・リンチ、ヒッチ・コック、スタンリー・キューブリック....
不条理サスペンスの三大巨匠はやっぱすごかったのだなぁ、とヘンな納得をしてしまう映画でありましたわ。
44点
一年以上眠れない男、トレバー(クリスチャン・ベール)。彼は昼間は工場で働く労働者であったが、ある日、彼の前にアイバンと名乗る男が現れる。それを境に彼のまわりで不可解な出来事が続くようになる......
冒頭で不条理映画と書いたが、「マルホランド・ドライブ」や「ドニー・ダーコ」といったタイプの映画を観た者が「え?」と頭に疑問符がつくタイプの不条理ではなく、主演のクリスチャン・ベールのみが底なし沼に落ちるようなタイプの映画で、そういう意味では真っ当な理路整然とした映画と言える。
あいや、理路整然とはしてない。
....何を言ってるのかわかりませんか?
ジミー大西のサイケな絵画や岡本太郎の熱のある造詣などに代表される芸術は彼らが普通とは違った感覚を持っているからこそ出来る技である。その感覚のおかげで日常生活においてはしばしば奇行をとったり、その才能に蝕まれ壮絶な最期を遂げる場合も多い。判りやすく言えばキチガイなのだな。
映画も同様で、例えば黒澤監督はとんでもないかんしゃく持ちの完璧主義者でそれ故彼から離れていった映画人は数多いし、トビー・フーパーも俺の大嫌いな(笑)ペドロ・アルモドバルも、すげぇ映画を撮る監督はおおよそキチガイであると思われる。
不条理映画になると更に顕著で、凡庸な人間が背伸びして作ると「真夜中の弥次さん喜多さん」のような普通のギャグ映画か「プラン9・フロム・アウター・スペース」のような薄っぺらいただの駄作になってしまう。
で、先に戻るとこの「マシニスト」は凡人が作った失敗作に分類されるところの不条理映画ってことなのだな。
いや、「死者の盆踊り」ほどつまらなくはないし、暗転の仕方や青を基調としたモノクロっぽい画面作りは過去の映画をオマージュしてて好感持てるし、主演のクリスチャン・ベールの30キロダイエットはよく頑張ったと思う。
でも不条理に判りやすい答えを用意した段階で既に不条理ではないワケで、万人が「あーやっぱそういうことね」って感想以外持ち得ないってのは作り方としてどうかと思うのだ。聞けば映画制作中、監督は精神を病んだらしい。で、こんなやる気のないオチになったかもしれない。
デヴィッド・リンチ、ヒッチ・コック、スタンリー・キューブリック....
不条理サスペンスの三大巨匠はやっぱすごかったのだなぁ、とヘンな納得をしてしまう映画でありましたわ。
44点