宗教観漂う映画というもの
2006年11月13日 映画 コメント (2)
「嫌われ松子の一生」鑑賞
東京で夢を叶えることもなくダラダラと日々過ごす笙のもとに父親が突然田舎から出てきた。聞けば生き別れた姉松子の拾骨に上京したそうである。叔母がいることを初めて知って戸惑う笙に父親は生前松子の住んでた部屋の整理を頼むのだった.....
俺の生涯ワースト映画は「火垂の墓」と「ダンサー・イン・ザ・ダーク」であることをはじめにことわっておく。
だから、俺はすごい戸惑った。なぜなら「ダンサー...」ととても良く似たモチーフの「嫌われ松子の一生」を見終わったあと涙を止めることが出来なかったからである。
生きることがとてつもなくヘタクソでありながらミョーなポジティブシンキングのせいで更に苦境に立たされる女川尻松子、ちょっとした勘違いから教師の職を追われDV作家の女から妾、トルコ嬢になった上に人を殺しヤクザの女になりしまいには殺されるという救いようのない一生、原作ではこの壮絶な一大叙情詩を今村作品ばりに壮絶に書いてるらしいが、中島哲也はこの原作を「下妻物語」テイストのキッチュなミュージカルにしやがったのだ。
この演出のおかげで、松子の神秘性に説得力が出るだけでなく、悲惨な生き方というヴェールを被ったファンタジーという意図が際だって明確になってくる。
「下妻」から更に進化したハレーションぎみなコントラストのサイケディックな画面構成と色づかいはテーマと融合し、宗教画のような体を成してるのでトリップしそうになる。それを端々に挟まれる火サスや土ワイネタや光GENJIネタが効果的に現実に引き戻してくれれる点も監督の遊び心以上の効果があるように思う。
事実だけを追いかけていったら不幸に映るかもしれない。でも本人が「まだマシ」と思い、「終わった」あとの華々しい新しい生活を夢見て生きることができるなら、そして逝ったあととはいえ、松子の脳内だけで歌い踊られたミュージカルが遺された者にも感じることができるなら、松子は間違いなく幸福であったに違いない。
父親の愛情が欲しいあまりに妹を憎んだ。そのカルマのせいで龍との確執をスタートに数々の男性遍歴にを刻むも巡り巡って結局龍に戻ってくる。しかし出所した龍に再び殴られフラれる様はそれもまた人生の一部だといわんばかりにらせんをグルグル回っていくようなものである。それでもラスト、あれだけ憎んでた妹の下に登っていくくだりはやっぱり幸不幸のらせんをまわっていく人の業というか、”輪廻”という言葉を意識せずにはいれらない。
実はこここそが「ダンサー...」と全く違う点であり、俺がもっとも心打たれたとこであるのだということが書いててわかった。うん、そうだな(笑)。
幸福とななんぞや?優しさとはなんぞや?愛とはなんぞや?
そんなことをファンタジーの中で考えさせられる希有な作品である。
中島哲也、こいつは日本のティム・バートンだ!!!
90点
で、テレビ版は見てないんだけど、これ、話だけを追っていくと昼ドラにありがちなすんげぇつまらん作品になるのような気がするんだけど、どーですか?>見てる人
東京で夢を叶えることもなくダラダラと日々過ごす笙のもとに父親が突然田舎から出てきた。聞けば生き別れた姉松子の拾骨に上京したそうである。叔母がいることを初めて知って戸惑う笙に父親は生前松子の住んでた部屋の整理を頼むのだった.....
俺の生涯ワースト映画は「火垂の墓」と「ダンサー・イン・ザ・ダーク」であることをはじめにことわっておく。
だから、俺はすごい戸惑った。なぜなら「ダンサー...」ととても良く似たモチーフの「嫌われ松子の一生」を見終わったあと涙を止めることが出来なかったからである。
生きることがとてつもなくヘタクソでありながらミョーなポジティブシンキングのせいで更に苦境に立たされる女川尻松子、ちょっとした勘違いから教師の職を追われDV作家の女から妾、トルコ嬢になった上に人を殺しヤクザの女になりしまいには殺されるという救いようのない一生、原作ではこの壮絶な一大叙情詩を今村作品ばりに壮絶に書いてるらしいが、中島哲也はこの原作を「下妻物語」テイストのキッチュなミュージカルにしやがったのだ。
この演出のおかげで、松子の神秘性に説得力が出るだけでなく、悲惨な生き方というヴェールを被ったファンタジーという意図が際だって明確になってくる。
「下妻」から更に進化したハレーションぎみなコントラストのサイケディックな画面構成と色づかいはテーマと融合し、宗教画のような体を成してるのでトリップしそうになる。それを端々に挟まれる火サスや土ワイネタや光GENJIネタが効果的に現実に引き戻してくれれる点も監督の遊び心以上の効果があるように思う。
事実だけを追いかけていったら不幸に映るかもしれない。でも本人が「まだマシ」と思い、「終わった」あとの華々しい新しい生活を夢見て生きることができるなら、そして逝ったあととはいえ、松子の脳内だけで歌い踊られたミュージカルが遺された者にも感じることができるなら、松子は間違いなく幸福であったに違いない。
父親の愛情が欲しいあまりに妹を憎んだ。そのカルマのせいで龍との確執をスタートに数々の男性遍歴にを刻むも巡り巡って結局龍に戻ってくる。しかし出所した龍に再び殴られフラれる様はそれもまた人生の一部だといわんばかりにらせんをグルグル回っていくようなものである。それでもラスト、あれだけ憎んでた妹の下に登っていくくだりはやっぱり幸不幸のらせんをまわっていく人の業というか、”輪廻”という言葉を意識せずにはいれらない。
実はこここそが「ダンサー...」と全く違う点であり、俺がもっとも心打たれたとこであるのだということが書いててわかった。うん、そうだな(笑)。
幸福とななんぞや?優しさとはなんぞや?愛とはなんぞや?
そんなことをファンタジーの中で考えさせられる希有な作品である。
中島哲也、こいつは日本のティム・バートンだ!!!
90点
で、テレビ版は見てないんだけど、これ、話だけを追っていくと昼ドラにありがちなすんげぇつまらん作品になるのような気がするんだけど、どーですか?>見てる人