この映画、一言で言うなら荒川良々主演のエログロ屈折純愛物語である。
荒川良々と聞いてピンとこない一般人には「ピンポン」のサエないキャプテン役や「下妻物語」の八百屋若旦那、「ロボコン」のロボット部の部長役の頭の足らない役を地でいく若手俳優と言えばわかるだろう。え?わからないって?テレビばっか観てるからです。(笑)
ヒロインは新井亜樹、この子も世間一般で言うと「中の下」レベルのオンナ。決して映画でヒロインを張れる容姿を持ってはいない。
そんな男女で恋愛ドラマを作ってしまうあたり。監督の井口昇は真性のキチガイであろう。いや、主役の抜擢だけでなく、その変態性は彼の撮るカット全てににじみ出ている。特にヒロイン新井亜樹に対する偏執的な愛情は決して美人ではない彼女の無意味なアップ長回しや正座でしびれた足をずーーーっと映してるカットあたりで特に良くわかる。実際に主役の新井亜樹は映画の途中からすごいキレイに映るようになってくるのだけど、これは監督の愛情所以だと思う。もっとも新井亜樹本人はそれをありがた迷惑と感じてる可能性、大だけど。(^_^;
監督はこの新井亜樹で5回はヌイてるとみた。
 
漫画家の同級生を演じるのは乾貴美子。このオンナ、映画で唯一マトモな人間だと思って見てたのだけど、あんな演技ができるのですな。びびった。一番恐かった(^_^;
その他登場人物も劇団大人計画の怪優勢揃いでとても楽しい。
大人計画俳優陣はここでチェックだ。
http://www9.big.or.jp/~otona/page007.html

ストーリーもねじ曲がっている。
漫画家で自閉症気味の主人公にはトラウマがある。それは小学生のとき大好きだった従姉妹のお姉さんのセックスを見たことだ。いや、セックスといってもちんちんとまんまんの結合ではなく、彼氏が従姉妹の目の玉を引っ張り出して愛撫してるところなんだけど。(^_^; とにかく彼にとってセックスは「目ん玉びろーーーん」であるのだ。
そんな漫画家のもとに新人編集者がつく。このオンナも潔癖性で対人恐怖症というおおよそ編集の仕事に向かない人間で、漫画家の一語一句にビクビクする始末。そのくせ彼氏はちゃんと居るのだけど、この彼氏ってのがまたイヤラシイ毛むくじゃらのおっさん(松尾スズキ)で当然セックスは無し。
虐められたトラウマを持つ者がなんかの拍子に虐める側にまわることはよくある話で漫画家はそのおどおどした編集を虐めることでうっぷんを晴らしてたのだが、ある時彼女の顔を傷つけてしまう。その事件がきっかけで漫画家と編集は職を失ってしまうのだ。「彼女に謝らなきゃ」漫画家は彼女のアパートに向かう。果たして彼女は居るのだが、彼女の傷跡には.....

はっきりいって出演者の演技は舞台向けのちょっとオーバーアクションで決して映画向きではない。ビデオ撮影(一部ハンディ使ってると推測)なので画面が汚い。くわえて特殊メイクも金がかけられないからちゃちぃ。レーベルが自主作品を主に扱うイメージリンクスという会社なので、致し方なのないことであろう。
しかし、そういう制作サイド負の要素を凌駕する内容の負と言いましょうか、グロさが際立っているのであんまり気にしなくていいかもしれない(笑)。

後半、彼女との待ち合わせに向かうシーンでは「ゾンビ」をフューチャーしながらも純愛なので最後はハッピーエンドである。
しかし、色々なハッピーエンドがあるものだ。俺はこのシーンでブッたまげたが、こういう世界観が存在し、こんな映画が商業ベースにのってTSUTAYAに列ぶことからもそんなに特殊じゃないのかもしれない。「セカチュー」を観たやつ全員に魅せて「イヤーーきしょーーーい!」と泣き叫ぶ姿を見てほくそ笑みたいものである。

80点。

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索