ジクジクする映画というもの
「ホテル・ルワンダ」鑑賞。

1994年、アフリカのルワンダで長年続いていた民族間の諍いが大虐殺に発展し、100日で100万もの罪なき人々が惨殺された。アメリカ、ヨーロッパ、そして国連までもが「第三世界の出来事」としてこの悲劇を黙殺する中、ひとりの男性の良心と勇気が、殺されゆく運命にあった1200人の命を救う。
(公式HPから抜粋)

ここだけを観ると感動モノと勘違いするかもしれない。
いや実際そういう風に作ってるのかもしれない。

さてひとつアフリカをおさらいをしよう。アフリカにおけるツチ族とフツ族はもともと同じ言語を持つ民族で、生活様式の違い(遊牧民族=ツチ族、農耕民族=フツ族)しかなかったそうだ。
それが大航海時代、植民地化したヨーロッパ諸国はツチ族をフツ族より高等な人種と洗脳し、ツチ族を使い大多数のフツ族の効率的な奴隷化を図る。その作戦はまんまと成功し、ツチ族はフツ族を下等支配していくことになる。
ルワンダにおいても同様だったが、独立気運が高まってくるとツチ族の支配者達はベルギーと距離をとるようになる。ベルギーにしたらソレは困るからってんで今度はフツ族の支援に回るのだ。長年の鬱積からフツ族はツチ族を虐殺していく。
お隣のコンゴ民主共和国やブルンジでも同様であったが、ブルンジではツチ族が権力を掌握し、大量のフツ族難民がルワンダに流れ込んできたということも虐殺に拍車をかけることになる。
94年の春から初夏に至る100日間に国民の10人に1人、少なくとも80万人が虐殺された。人口比でいうとホロコーストにおけるユダヤ人の犠牲者のほぼ3倍、 広島・長崎の原爆投下以来、最も効率的な大量虐殺だった。
それがこの映画「ホテル・ルワンダ」の背景になるのだ。

世界史、アフリカ史をかじったことがある人なら常識の話かもしれない。
しかし、この事実を俺も含めて多くの人が知らない。利潤を得るために植民地化し、洗脳を図ったドイツ、フランス、ベルギーをはじめとしたヨーロッパ勢は見て見ぬふりをし、この虐殺を”民族争いの末の惨事”で片づける。

そんな中で孤軍奮闘するホテルマン、ポールをドン・チードルは見事に演じきった。
何も出来ない大佐役ニック・ノルティも素晴らしかった。

これが紛れもないノンフィクションであることに驚きを隠せない。



....てなことを事前知識としてもっているのといないのでは評価に雲泥の差があるように思う。
俺はこの泣かせ演出にちょっと興ざめ。
加えて絶望的な殺戮シーンは的外しのB級ハリウッド映画という印象しか残らなかった。重いテーマを扱うには力量が足らなかったのか、ルワンダのホテルマンをヒーローにしたいのかはわからないが、テーマがテーマだけにもうちょっと品のある演出をして欲しかったと思う。

この映画、日本の配給が食い付かなかったらしい。
で、署名運動をおこして上映にこぎ着けたそうだ。

それを聞いて「この無関心こそがルワンダの悲劇を生んだ」というのは容易い。
ただ、映画人としてこれを買い付け興行することやこの映画を観てわかった顔することを免罪符にしてスルーするのが正しい道かと言えばちょっと違う気もしないでもない。

優等生が見せるあざとさを感じる。
なんかそんなちょっとヤな印象を持ってしまった(ーー;)

60点

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