繁華街まで4キロ、という場所に住む俺は飲みに行くときはもっぱら自転車を使う。
飲酒運転で人様を傷付けたり罰金を払うのがイヤというのもでかいが、余計なカロリーを摂取するのだからせめてその分を取り返そうという無駄なあがきによるところも大きい。
その日もマスターにおやすみを言い気分良く家路についた。時間は午前0時を少しまわったところ。少し肌寒いが、酔い覚ましにはちょうどいい。
信号待ちをしていると、後ろから歌を歌いながら近づいてくるチャリがあった。
「ロ〜タスクッラーブ♪」
自動車整備業者による全国組織ロータスクラブのCMソングみたいだ。（聞いたことのない人すんません）
ずいぶんご機嫌だな、この人も飲み屋の帰りかな？と見てみると
（ん？）
どうも様子がおかしい。ロータスクラブのCMソングだけじゃなく、国産車の社名を矢継ぎ早にしゃべってたり、誰もいない隣に話しかけたり、急に奇声をあげたりしてる。
（この人は....頭にお花が咲いている人かもしれない）
信号が青になったので彼がチャリをこぎ出した。こぎながらずっとロータスクラブを大きな声でリピートしている。
幹線道路沿いとはいえ、夜中の0時過ぎ、行き交う車も少ない。ロータスクラブを歌うそのお花畑くんはタラタラとチャリをこぐ。
はじめは面白がって後をついてたが、いい加減ウザくなったので(笑)、信号で止まってた彼を追い抜かそうと赤信号を無視して走り抜けた。

夜風が気持ち良い。しばらくすると、国道と交わる交差点にぶつかった。信号待ちをしてると後ろでぶつぶつ言ってる人がいるではないか。
「赤は止まれ、黄色は注意。赤は止まれ、黄色は注意。赤は止まれ、黄色は注意....」
早口で繰り返すその人はさっきのお花畑くんだった。(^_^;)
年の頃は30くらい、上下ジャージでボサボサ頭、ママチャリに乗り赤赤黄黄繰り返してる。
（見ないようにしなければ....）
信号が青になった瞬間にペダルをこいだ。
俺のチャリはGIANTのXtC870にオンロードのホイールをはかせている、街乗りスペシャルだ。酔っ払ってるのと夜だったのでマジではなかったが、ママチャリが追いつく速度ではない。しかーしお花畑くん、しっかりついてきてる。
「赤は止まれ、黄色は注意。赤は止まれ、黄色は注意....」
と叫びながら....
幹線道路の信号につかまると止まらないワケにはいかない。信号待ちで追いつかれて後ろでブツブツ囁かれる恐怖(T^T)。

夜中の0時、車の通りも少ない。さすがに恐くなって横道に入る。彼はついて来たが、信号さえなければぶっちぎることができる。
少し遠回りしたが、無事帰宅することができた。
彼は何をいいたかったのだろうか？信号無視に対する戒めなのか？だとしたらごめんなさい、もう信号無視しません。(T^T)

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いつぞやの　ツルウメモドキ　小さな手
　借りは返すと　笑う青年