「僕の彼女を紹介します」だっけ?韓国の映画。「猟奇的な彼女」のセルフパロディのやつ。彼女とおまんこする前に手ぇ繋いでこんなの観るやつが街中に溢れている日出づる国、日本のクリスマスだが、漢ならこっちを観たいものである。

「オアシス」
監督は「グリーン・フィッシュ」「ペパーミント・キャンディ」のイ・チャンドン、この二作は兵役と若者と死を描いたものだが、三作目にしてはじめてのラブロマンスに挑戦だ。しかしやっぱこいつはただ者ではない。

暴行や強姦を繰り返すジョンドゥはひき逃げの罪で服役、出所したはいいが、誰も彼の出所を快く思ってない。家族すら疎ましがられる始末。そんな中、ひき逃げの被害者宅に謝罪に訪れるとそこには重度の脳性麻痺の女がいた.....

あー、障害者の恋愛映画ね。なんか「ジョゼと虎と魚たち」みたいじゃん。

と思うかもしれない。
しかしこの韓国版「ジョゼと虎と魚たち」は本家とは違い(主にビジュアル面で)暴力的なまでに人の内側をえぐり、現実を突きつけるのだ。これに観た者は度肝をぬかすことになり、30分で席を立つ者と最後まで引き込まれて観入ってしまう者に分かれる。

そりゃそうだろう、主役のジョンドゥは強盗強姦の常習者で被害者の娘の障害者コンジュを「障害者なら抵抗されないや」ってんで犯すようなろくでもない男だ。
しかもその娘を演じるムン・ソリがもう、女優を捨てる覚悟のすさまじい演技。あまりにもリアルな障害者を演じる。
ドキュメンタリーじゃないんだから...

......これこそが、イ・チャンドンの狙ったところなのだろうと思う。
劇中に出てくる健常者の人々...
障害者用マンションに居座り妹を追い出してしまう兄夫婦。
弟に押しつけた過去の罪を恐れ逆上する兄。
相手のことを考えず正しいことをしてると勘違いしてる隣人。
身障者と恋愛するわけがないと決めつける警官。

この人たちはまさしく我々だ。我々の中にある恥ずべき部分の抽象なのだ。うっかりしてたらついつい表に飛び出してしまう「差別」や「偏見」という名の。
この映画を観て怒り、それに気付いてハッとしてしまう。

そして、この映画を観て「キツいなぁ」と目を背ける自分に恥じるのだ。

ジョンドゥの脱走と伐採、そしてそれに応えるコンジュの方法にはキツいと思ってたのも忘れて泣いてしまった。

「んなワケねぇじゃん」を尤もらしくみせるのがファンタジーであるならば、これは至高の恋愛ファンタジーであると言えるだろう。「ジョゼ...」とは立ち位置もカラーも結末も違うが同じくらいオススメできる映画である。

80点

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