気合いの合気映画というもの
2004年8月17日 映画
※私信※
だいありーのーと映画日記部門の雄(と俺が勝手に思ってる)
tkrさまから直リンをいただけるとは光栄です。
「スチームボーイ」考、なるほど、と思いました。
2〜4章楽しみにまっております。
くわえてだいありー随一の邦画部門の語り部、まぐれさま
ブックマークありがとうございました。
「パラレル西遊記」はF先生お得意のしっかりしたSFロジックが楽しめる傑作ですね。ウエットな作品好きの俺はやっぱ「海底鬼岩城」がベストですけど。
**********
Q:加藤晴彦はどういう人物でしょうか?
A:使いやすいバラエティタレント
正解。
すぐ泣くことができるから「アイノリ」とか「はじめてのおつかい」とかお涙頂戴のヌル系バラエティにはもってこいのキャラクタだろう。あと10年もしたら「波瀾万丈」や「行列のできる法律相談所」でも使ってもらえるようになるかもしれない。
というどこにでもいる若手の安いタレントである。
そんなのが主演した映画「AIKI」を観た。
タイトルは「合気柔術」のAIKIである。
ボクシングの有力選手がバイク事故で半身不随になる。彼女とも別れ自暴自棄になって死のうとするが、同室のおっさんに諭されとりあえず一年だけ生きてみることに。
一年後、ふとしたことからテキ屋の親分と知り合いになり、露天商の職につく。神社で知り合った巫女のサマ子との恋愛と奉納演舞で魅了された合気柔術を軸に青年の立ち直りを描く作品。
テーマだけを見ると大変重たいドラマという印象と「動物と身障者出しゃー涙をとれるだろ」という制作者側の姑息さが気になるかもしれない。俺はそう感じた(笑)。
しかしその印象はいい意味で裏切られることになる。
これはひとえに監督の天願大介の力量だろう。
父、今村昌平の下で映画脚本の腕を磨き、実在する障害者プロレス団体を扱ったドキュメンタリー「無敵のハンディキャップ」でデビューしたサラブレッド。
そんな彼が「無敵の...」とは違ったアプローチで身障者を描いた本作は大きな感動こそないものの、しっかりと練り上げられた佳作となった。
なにが良いって登場人物が素晴らしい。
主人公の加藤晴彦については後述。
巫女役のともさかりえはいい意味で不細工さが出てきた。絶対伸びると思う。とっとと乳を見せなさい。
同室のおっさん役の火野正平はこの役にぴったり。彼に言わせた台詞一言一言は身障者だからこそ、の台詞だと思うのだが、こういう引き出しは「無敵の...」で培ったものなのだろう。「脊損(脊髄損傷)になって3ヶ月で死のうなんざ10年早ぇえ!」という台詞は秀逸だと思う。
テキ屋の親分に桑名正博。これもハマリ役。
合気柔術の師範に石橋凌、もう立派な役者さんですね。
その他エロビデオ屋の店長に神戸浩、そこの常連に佐野史郎、ちょこちょこ出てくるバーテンに永瀬正敏と、もう勢揃いなのだ.。
くわえて身障者の描写もすごい。トイレでウンコをほじくり出すシーンや悲喜こもごもの脊損者のセックスに対する描き方は観る者にダイレクトに届く。このあたりは「ジョゼと虎と魚たち」より軽く作ってあるのだけど、それがリアルさを醸し出してるように思う。
主人公と合気道との距離感も絶妙である。
健常の時からボクシング一筋、団体競技なんざクソ食らえと思ってた主人公、チェアウォーカーになって車いすバスケを勧められても「格闘技じゃないとダメなんだ」と拒絶するんだけど、合気の極意は気を合わせること、相手を受け入れる武術であると解ってくることで人間としても成長しはじめるプロットは青春スポーツモノの王道を行くスタイルだ。
くわえて石橋凌に幾度となく口にさせている「わたしはサラリーマンですから」という台詞から、どんな人間でも足かせがある「障害者」なんだと、チェアウオーカーということが大きなハンデにはならないと教えてくれている。
そんなさりげない脚本がとてもあたたかくてグッド。
さて、こんな物語の主人公を演じた加藤晴彦である。
凡庸な青年、今風のカルい若者、そして脊損者のあきらめというか悲壮感なくその役を演じることができる役者は実はそんなにいないのだ。
格好悪く格好良くぶっきらぼうで車いすのそのまま渋谷を歩いてても誰も気付かないくらいのリアル感。多少大げさかもしれないがこの映画は加藤晴彦をもってして完成したといって過言ではない。
「MIDORI」「回路」等、映画出演も多い彼だが、案外要注意の役者なのかもしれない。
81点
だいありーのーと映画日記部門の雄(と俺が勝手に思ってる)
tkrさまから直リンをいただけるとは光栄です。
「スチームボーイ」考、なるほど、と思いました。
2〜4章楽しみにまっております。
くわえてだいありー随一の邦画部門の語り部、まぐれさま
ブックマークありがとうございました。
「パラレル西遊記」はF先生お得意のしっかりしたSFロジックが楽しめる傑作ですね。ウエットな作品好きの俺はやっぱ「海底鬼岩城」がベストですけど。
**********
Q:加藤晴彦はどういう人物でしょうか?
A:使いやすいバラエティタレント
正解。
すぐ泣くことができるから「アイノリ」とか「はじめてのおつかい」とかお涙頂戴のヌル系バラエティにはもってこいのキャラクタだろう。あと10年もしたら「波瀾万丈」や「行列のできる法律相談所」でも使ってもらえるようになるかもしれない。
というどこにでもいる若手の安いタレントである。
そんなのが主演した映画「AIKI」を観た。
タイトルは「合気柔術」のAIKIである。
ボクシングの有力選手がバイク事故で半身不随になる。彼女とも別れ自暴自棄になって死のうとするが、同室のおっさんに諭されとりあえず一年だけ生きてみることに。
一年後、ふとしたことからテキ屋の親分と知り合いになり、露天商の職につく。神社で知り合った巫女のサマ子との恋愛と奉納演舞で魅了された合気柔術を軸に青年の立ち直りを描く作品。
テーマだけを見ると大変重たいドラマという印象と「動物と身障者出しゃー涙をとれるだろ」という制作者側の姑息さが気になるかもしれない。俺はそう感じた(笑)。
しかしその印象はいい意味で裏切られることになる。
これはひとえに監督の天願大介の力量だろう。
父、今村昌平の下で映画脚本の腕を磨き、実在する障害者プロレス団体を扱ったドキュメンタリー「無敵のハンディキャップ」でデビューしたサラブレッド。
そんな彼が「無敵の...」とは違ったアプローチで身障者を描いた本作は大きな感動こそないものの、しっかりと練り上げられた佳作となった。
なにが良いって登場人物が素晴らしい。
主人公の加藤晴彦については後述。
巫女役のともさかりえはいい意味で不細工さが出てきた。絶対伸びると思う。とっとと乳を見せなさい。
同室のおっさん役の火野正平はこの役にぴったり。彼に言わせた台詞一言一言は身障者だからこそ、の台詞だと思うのだが、こういう引き出しは「無敵の...」で培ったものなのだろう。「脊損(脊髄損傷)になって3ヶ月で死のうなんざ10年早ぇえ!」という台詞は秀逸だと思う。
テキ屋の親分に桑名正博。これもハマリ役。
合気柔術の師範に石橋凌、もう立派な役者さんですね。
その他エロビデオ屋の店長に神戸浩、そこの常連に佐野史郎、ちょこちょこ出てくるバーテンに永瀬正敏と、もう勢揃いなのだ.。
くわえて身障者の描写もすごい。トイレでウンコをほじくり出すシーンや悲喜こもごもの脊損者のセックスに対する描き方は観る者にダイレクトに届く。このあたりは「ジョゼと虎と魚たち」より軽く作ってあるのだけど、それがリアルさを醸し出してるように思う。
主人公と合気道との距離感も絶妙である。
健常の時からボクシング一筋、団体競技なんざクソ食らえと思ってた主人公、チェアウォーカーになって車いすバスケを勧められても「格闘技じゃないとダメなんだ」と拒絶するんだけど、合気の極意は気を合わせること、相手を受け入れる武術であると解ってくることで人間としても成長しはじめるプロットは青春スポーツモノの王道を行くスタイルだ。
くわえて石橋凌に幾度となく口にさせている「わたしはサラリーマンですから」という台詞から、どんな人間でも足かせがある「障害者」なんだと、チェアウオーカーということが大きなハンデにはならないと教えてくれている。
そんなさりげない脚本がとてもあたたかくてグッド。
さて、こんな物語の主人公を演じた加藤晴彦である。
凡庸な青年、今風のカルい若者、そして脊損者のあきらめというか悲壮感なくその役を演じることができる役者は実はそんなにいないのだ。
格好悪く格好良くぶっきらぼうで車いすのそのまま渋谷を歩いてても誰も気付かないくらいのリアル感。多少大げさかもしれないがこの映画は加藤晴彦をもってして完成したといって過言ではない。
「MIDORI」「回路」等、映画出演も多い彼だが、案外要注意の役者なのかもしれない。
81点