大学を卒業して関西で就職した。
学生時代からつき合ってた彼女は地元に残しての就職だった。

遠距離恋愛ということで彼女に内緒で多少遊びもした。
部署の違うY子ちゃんと社員旅行でいい仲になって、ちょくちょくデートもした。お互いの事を話すうちに彼女は自分が病気であることを告白する。
病名までは言わなかったが飯ごとに打つ注射やいつもポケットに入ってるチョコレートや錠剤から若年性糖尿病のようだった。
糖尿病の合併症には腎臓病、網膜症、神経障害がある。小学生のときに発症した彼女は当時すでに片目が失明しててもう片方も0.3程度の視力しかなかった。
車の免許更新に通らず運転免許を失うと同時に職もやめた。
でも、俺は彼女と相変わらずテキトーにつき合ってた。
秋、ポケベルを鳴らしても返事がないので彼女のうちに行ってみるとお母さんが居て入院してるというので慌てて教えられた病院に行く。ベッドの上にいた彼女には右足がなかった。血行障害で壊死したため切断したのだと彼女は寂しく言った。

数ヶ月のリハビリの後、彼女は義足と盲学校の入学通知を得る。学校に通うために雇用促進住宅に申し込み見事当選。障害者は優先的に入居できるようだった。新居で二人で乾杯した。その頃には視力はもう0.1もなかった。
病気が原因で高校中退だった彼女は高等科からの再勉強、くわえて鍼灸の勉強をする。目が見えないのでノートもとれず、カセットテープを使った耳からのみの学習なので随分と手こずったようだ。それでも彼女は頑張って高校の卒業資格とマッサージ師の国家資格を取得した。そしてその上の鍼灸師の資格をとるために編入を決めたとき、二人は別れた。
原因はまぁ、いろいろ、ということになっている。でもホントは俺が逃げたんだ。

.......と、こんな俺が「ジョゼと虎と魚たち」を冷静に観られるワケないじゃないかっ！
(T^T)

池脇千鶴のネイティブ大阪弁も、妻夫木くんの嗚咽も、上野樹里の隠すことない激しい女性性も、新井浩文のバカっぽい優しさも、江口徳子の飄々さも、荒川良々や森下能幸や板尾創路の地なのかなんなのかわからない演技も全部愛おしい。
そして、とても、とても生々しい。

昨日書いてアップしようと思ったのだが書けなかったのだ。
冷静なレビューが出来ないくらい心に残る。
だめだよ、犬童一心。こんなの作っちゃ......

90点