スピルバーグには2つの顔がある。
ひとつは「レイダース」や「ターミナル」「A.I」といったハートフルでコメディタッチのわかりやすいエンターテイメント性を全面に押し出した作品群。
もうひとつは「プライベート・ライアン」「シンドラーのリスト」「激突」等の神の目線から冷徹に起こってることを撮り続ける事を主としたダークサイドの作品群である。
「宇宙戦争」は明らかに後者よりの作品であるが、スピルバーグはこの作品で過去にはない....というか、過去を否定するような第三の顔を見せることになるのだ。

映画はリアリティが大事である。ただ、リアルには面白味がない。
映画が映画であるためには、嘘をいかに本物らしく見せるか?が重要となってくる。ハリウッドを中心とした映画界はCG技術にその答えを求め、革新的で斬新な映像表現で一世を風靡することになるのだが、その急先鋒がルーカスであり、盟友スピルバーグだった。ご承知の通り、ルーカスは自身の会社の技術と金を総動員して「SW」を作りその最先端技術で我々を驚嘆させた。
対してスピルバーグは(CGは使うものの)、エイリアンの圧倒的な科学力の前に逃げまどう人々や無力な軍隊、そしてあのトム・クルーズに情けない父親役をやらせるということで(逆説的ではあるけど)リアリティを生じさせている。
「詳しいことはオリジナルを観ろ!」と言いたげなばっさりとしたシナリオ、エイリアンの説明を極力抑え、トムトムの視点で描ききるその演出、スピルバーグには珍しい画面細部に至る丁寧な描写、ダコタたんの耳障りなキンキン声(笑)。これらは「スピルバーグの映画らしくない」という不安感も手伝って妙な説得力を持つのだ。
そう第三の顔とは、過去の自分をあざ笑うかのような破壊者としてのスピルバーグである。
「インディペンデンス・デイ」と正反対な映画。「インディペンデンス・デイ」はトホホ映画であるが、頭が悪いローランド・エメリッヒが更に頭の悪い観客用に作った感動娯楽大作であるので笑って済ませられるしアリだろう。ただ「宇宙戦争」はこの時期に、スピルバーグ自身が撮らなければならなかった作品なのか?という疑問は常に感じている。
「グーニーズ」で「ジュラシック・パーク」で「ジョーズ」な貴方の映画が大好きだった俺は、ちょっと、置いてけぼりになった気分である。

60点

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