乳房....

地球上に存在するほぼ全種のほ乳類が有し、腹部の左右に対をなしてある。雌では乳腺や皮下組織が発達して隆起し、哺乳期には乳汁を分泌するという子孫の育成に不可欠な部位である。
もうひとつ、乳房には重要な役割が考えられている。
それは雄を引きつける役割である。
古来、人間が人間に進化する前、四肢を地につけて生活していた。二本足で歩行するようになったのは手の親指の構造がかわりモノを持つのに適するようになったこと、そして乳房をさらけることにより、乳頭や臍の穴から発散する性フェロモンを拡散、雄を発情させ、有能な遺伝子を遺す為だとも言われている。
大きな乳房、それはより多くの子孫を残すことができる、まさしく優良母体としてのアナウンス効果があった。昔っからオトコは巨乳好きだったのである。

余談だが、それより後、人間は発情期を失うことになる。理由には諸説あるが、これによって性フェロモンの効果は格段に落ち、乳房が発情の鍵にならない時期が長く続く。（性器はこの間もずっと「エッチなもの」と認識されていた）乳房が再び脚光を浴びるのは、人間が衣服を着だして社会性のある生活をし出してから、極々近代になってからのことである。

さて、歴史の一部に空白期間があるとはいえ、現代に生きるオトコにとってやはり乳房はオンナを認識する上で重要な部位である。しかし、セックスが単なる繁殖行動でなくなってから、従来は自然界で淘汰されていったはずの貧乳の雌やそれを愛でる雄といった劣性伝子的に生き残る可能性が出てきた。繁殖上有利な体型以外も「嗜好」として認められるようになったのだ。
これにより乳房の在り方も劇的に変化していくことになる。
現在、乳房はセックスアピールの象徴とされている。矯正下着、豊胸手術などはオンナが「よりオンナらしく」と望むが故であろう。それはそれでかまわない。乳房はもはや人類の子孫のものではなく、それを有するオンナのものになりつつある。近い将来、繁殖というものが人工的に管理される時がきたら、そのときこそ乳房はオトコの手より完全に脱することだろう。

最後にひとつ、気になる報告がある。
近年、世界的な先進国の少子化と反比例して乳ガンの患者が増えてるという報告があがった。食品や生活習慣の変化によるものと答えるのはたやすい。しかし、この二つに何らかの因果関係があるとすれば...？
乳房はオンナの手をも通り過ぎ、単なるほ乳類の証となるのかもしれない。そう、盲腸のように。
繁殖行動に関係なく拡大する「乳房」に神様のご加護があることを祈るだけである。

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今一瞬の　お前が欲しい