俺の中でクレしん映画史上最上級に位置するのは「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」であるが、エンターテイメント作品として「オトナ帝国」に肩を並べる作品をあげるとするならば、この「爆発!温泉わくわく大決戦」であろう。
本編の「わくわく大作戦」とショートフィルム「くれしんパラダイス!メイド・イン・埼玉」の二本立てで公開されDVDにも2作品入っている。
「くれしんパラダイス」の方は現在のクレしん映画を統括する水島努が、「わくわく」のほうは名作「オトナ帝国」「アッパレ戦国」を手がけた原恵一が監督を務める。

まず「くれしんパラダイス」だが、ひまわりの目線で野原家の日常を描くという一本。ひまわりがチョウチョを追いかけるシーンをひまわり視点で描くもんだから左右上下にパンする。セルアニメが一番苦手とするところだが、小さな子供の視点で見る天井のなんと高いことか。この空間演出力は見事だ。
二本目はねねちゃんが主役の不思議の国のアリスをパロった作品、トランプのかわりに花札がアリス=ねねの行く手を阻み、世界はギャンブルの不思議空間へ。って「ロン!国士無双!」とか子供にみせていいのか?(^_^;) 無駄にリキの入った作画を含めて渾身のファンタジー作品に仕上がっている。
そして三本目、みさえが数日間の便秘から解放されたそのうれしさをミュージカルで表した傑作。「ウエストサイド物語」から「タイタニック」「サウンドオブミュージック」「雨に唄えば」「ブルース・ブラザーズ」という過去の名作シーンをパロったこいつは映画好きにはたまらんだろう。
ラストはぶりぶりさえもんのくっだらないショートコント。いや、わらった。(笑)

そして本編である。
悪の結社YUZAMEは溶岩で海水を温め、全地球を温泉で沈めてしまうという地球温泉化計画をたてる。迎え撃つのは秘密組織温泉Gメン、彼らはYUZAMEの野望を打ち砕くため、正しき者を導くといわれる金の魂の湯、略して”キンタマの湯”を捜索、発見する。なんとその”キンタマの湯”は野原家の下にあったのだった......

この作品は往年の怪獣映画をオマージュしている。
自衛隊の行進曲とロボットの侵略BGMにまんまゴジラのテーマと自衛隊のテーマが使われてるし、一時期「ガメラ」での自衛隊の描き方がリアリティあるともてはやされたが、逃げまどう住民の悲哀や国の危機管理のあり方をキチンと描く。
あぁ原恵一はゴジラが好きなのだということをかいま見ることができる丁寧な描写だ。
その他、以外と本格的なガンアクションシーンや車や戦車、拳銃といった小物のリアルさも見る人が見ればうなりをあげるはずである。

それでいてYUZAMEのロゴがYAZAWAのロゴにクリソツだったり、ひろしとみさえの夫婦げんかの凄惨さとか、この騒動の原因が長嶋茂雄だったりと馬鹿馬鹿しさも天下一品。
「くだらねぇ!(笑)」と笑える映画なんて最近少ないぞ?

そしてこの映画の影の主役、温泉の精タンバの存在がでかい。
アテレコに本物の丹波哲郎を使い、劇中「俺はジェームズ・ボンドと風呂入ったことがある」だの「本当だからしょーがないっ!」だのを台詞で言わすのだ。
脚本書く方も方だが、引き受ける丹波も丹波だ。
「わくわく温泉」ではこういった絶対子供にはわからない小技がてんこ盛りなのである。それでいて子供の鑑賞に十二分に耐えうるからすごい。

原恵一はこのヒットに調子をこいて2001年に「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」、続く2002年に「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッバレ!戦国大合戦」という日本映画史に燦然と輝く2本を世に出すワケだが、そのスピリッツはこの作品から始まったといえるだろう。

TSUTAYAで借りるものがなかったら是非借りてみてもらいたい。
90点
和泉元彌さん(本名山脇さん)が駐禁反則金未払いで逮捕
ガシャ━━━━||Φ|(|´|Д|`|)|Φ||━━━━ン

さすが人生をかけたネタ師だな、お見事。

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