もしかしたら、国家というものにも年齢があるのかもしれない。

アフリカやアジアの新興国の政治的ゴタゴタや血生臭い殺戮は、10代の血気盛んな若者も心情とかぶるところがなきにしもあらずだし、歴史ある英国はそのまま偏屈ジジィを想像させる。
フランスは自分勝手なおばちゃんで、日本は文化サークルに通う世間知らずのオッサンだ。中国はいいとこのボンボンって感じ。

アメリカは30代後半のパパ。
ようやく過去の恥ずかしい失敗を笑いながら話せるようになったくらいオトナで、将来みんなの為に頑張らないと!と思うくらい青い。そんな青年。

そんなヤツのことを俺はとても好きで、だから、この映画で描かれてる「合衆国」という国も大好きです。

「フォレスト・ガンプ/一期一会」

トム・ハンクス中期の最高傑作でありオスカー受賞作。
ちょっと頭の弱い男の子の半生を20世紀のアメリカの歴史と重ねたファンタジー。
生涯の中でベスト20にはいる大傑作である。

もう、文句のつけようがないくらい素晴らしいからどこから褒めようか悩むのだけど、とりあえずはキャスティングが最高であろう。

トム・ハンクスのすばらしさは言うに及ばずだが、往年のオスカー女優サリー・フィールド。この作品ただひとつで俺の心を捉えた”ダン中尉”ゲイリー・シニーズ、そして今作でアメリカの負の部分を一手に背負ったロビン・ライトも好演。
後に天才子役として名を馳せるハーレイ・ジョエル・オスメントくんも子役で出演。
神が降りた迫真の演技というのはなかったが、それぞれが破綻なく演じきったのがよかった。

そして劇中たくさん出てくるガンプがからむエピソード群である。ウォーターゲート事件からピースマーク誕生秘話等々クスッと笑うエピソードがてんこ盛り、こういうお遊びシーンは長い上演時間を苦にしない作用がある。

そして、やはり監督ロバート・ゼメキスの凄さであろう。
感動作でありながら前述の様なお遊びシーンを忘れず突っ込む....つーか、そういう遊びシーンを撮りたいがために映画を作ってるんじゃなかろーか?と思えるくらい力が入る。
それは過去のドキュメントフィルムをご丁寧にデジタル処理してガンプをニクソンやジョン・レノンと共演させることからも見て取れる。
また、ベトナム戦争に対するとらえ方も共感する。時代に流されるガンプを通して決して反戦でも好戦でもなくただアメリカの一時代の出来事と描くその姿勢はアンチ・オリバー・ストーンとも捉まえることができるのではないかと思う。それを如実に現してるのがダン中尉の車いすの描写ではなかろーか。
戦争もエビ漁も”箱の中のチョコレート”なのだな。
その他、音楽やカメラも秀逸である。
ガンプが麦畑を走るシーンは俺の中でベストシーンのひとつだ。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」からこっち、彼は今作をもって引退したといっていいだろう。その後、数々の映画の監督を務めるものの、そのほとんどを(ゼメキスが本当に作りたい)ダーク・キャッスル作品の製作に費やす。正直レーベルの大成にはまだまだほど遠い。でも新作「蝋人形の館」がラジー賞候補に挙がったとき彼はきっとちょっと嬉しかったんだと思う。想像だけど。
そんなノンポリこそポリシーとする彼は、また俺の大好きな監督さんなのであった。

「フォレスト・ガンプ」 95点
「蝋人形の館」 10点(笑)

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