いよいよエイティーズ最終回である。
このGW中に観た映画12本!(うち80年代10本、90年代1本、劇場鑑賞1本)仕事は普通にあったのだから平日でこの数は我ながらすごいと思う。おかげでテレビで嫌なものを観ずに済んだ。

最終回は「悪霊島」でいこうと思う。
まずは角川と作家横溝の関係から書かねばならん。
角川と横溝との出会いは「八つ墓村」や「本陣殺人事件」などの横溝の小説が角川文庫で文庫化されたことからはじまり、ATGから「本陣殺人事件(中尾彬/高林陽一)」が映画化されるのをきっかけに急速に深まっていく。ATGは金のない映画会社だったので封切り劇場も少なく宣伝費もかけられなかったのだが、書店での売り込み等、角川のバックアップもあり映画は大ヒットを納めたのだ。また、この映画のヒットと連動して「八つ墓村」等の角川文庫も爆発的に売れはじめた。俗に言う横溝ブームである。

それに目をつけた松竹が野村芳太郎/渥美清コンビで「八つ墓村」の映画化を発表、角川はこれ幸いにと一気に小説の増版をはかる。
ところが映画の制作は遅々として進まない。当時制作が遅れることはよくあることだが目論みがはずれたのは角川サイドである。当時はまだ映画制作会社に力があったので、弱小出版社の都合なんぞ聞いてもらえなかったのだろう。
さて、ここで、春樹は大一番を打つ。
当時設立したての角川映画だったが、第一回公開作品を既に制作がはじまっていた「オイディプスの刃」から「犬神家の一族(石坂浩二/市川昆)」に変更したのである。
「オイディプスの刃」のシナリオの出来が悪いというのもあったのと東宝の後ろ盾があったからこそ突貫工事で完成できたというものの、ここに春樹の商魂が見て取れるのではないだろうか。

公開された「犬神家の一族」は年度別興行成績4位の大ヒットをとばし、文庫も爆発的に売れることになる。しかし、角川が横溝作品で実質的な映画制作に携わったのは「犬神家の一族」のみであとはもっぱら他作品の制作に専念した。自社が版権を持つ金田一シリーズを売るために表紙を替え、帯を替え売りさばいていったのだ。
また横溝の晩年の作品はそのほとんどを角川の野生時代で発表させるという囲い込みにも成功する。映画化とそれに伴う文庫の売り上げアップ、このようなところから商業主義のカドカワと揶揄されるのだが、ホントにそうだろうか?
その後の映画制作を見ても決して儲け主義のために映画作ってるとは思えない。道楽かもしれないが、きっと映画が好きだったんだろうと思う。じゃなきゃあんなバカバカしい大作作らないだろ。自ら出演したりしてるしな<春樹ちゃん。

さて、横溝最後の作品となる「悪霊島」の映画化は春樹もそれがわかってたのか、角川プロデュース作品としての制作だった。。
古谷一行でも石坂浩二でもなく鹿賀丈史を金田一に据え、時代設定も60年代後半に変更、さらに監督に篠田正浩&ヒロインにその妻岩下志麻、その他室田日出男、古尾谷雅人、岸本加世子、佐分利信、中尾彬、石橋蓮司などのそうそうたる布陣。加えて当時使用権に一千万円積んだと言われる主題歌「LET IT BE」。
テレビスポットにも金をかけるという、横溝に敬意を表してか?はたまた春樹の気まぐれか?最後の最後で派手な花火を打ち上げるというまさに角川の看板映画だったのだ。

しかし、映画は成功とは言い難かった。原作を端折りすぎたストーリー、テレビ的な安っぽい演出、興行成績もふるわず終わっていった。
また、公開終了後もシャム双生児を扱った差別的な表現がもとでテレビ放映されなくなったり、ビートルズのテーマソングということで、版権&放送コードの問題でビデオ化ができないという非常な運命をたどることになる。
もっとも10数年前は普通にテレビで放送してたし、ビデオも販売されてたことを考えるとワケのわからない自主規制と版権を巡るゴタゴタのおかげでお蔵入りしたと言っても差し支えないだろう。

映画が公開された年、作家横溝正史は他界する。あの映画を彩った室田日出男、古尾谷雅人、佐分利信、石橋蓮司も今は亡い。角川はその後お気楽映画を乱発し、「天と地と」の大失敗と例の覚醒剤問題で一時代の幕を下ろした。
そういう哀しい運命のクロスロードにある映画なのである。

昨年、主題歌の部分が別人吹き替え版の「悪霊島」がDVD化された。
まぁこうやらないと日の目を見ないのだからしょうがない。
でも観ててちょっと泣けた。

59点。

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さてさて、如何だったでしょうか?「80年代イッキ鑑賞というもの」
80年代を借りたつもりが90年代のシロモノも混じってて改めて借り直したりしましたが(笑)、まぁそのときのことを思い出しながら書いてるとレビューも結構楽しく書けたと思います。
ウンチクの部分は思い出してながら書いてるのと、自信ない部分はネットでテキトーに検証して書いてるので多少間違いがあるかもしれませんが許してくださいねーーん。

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